【人間模様】未成年パチンカー

人間模様

こんな安物の俺でも、誰か気に留めてくれる人がいるんなら
俺は一体何を惜しむっていうんだ
オーバーだけど言わせてくれよ
きっと、命だってくれてやるさ

ドラマ『未成年』より。博人のモノローグ。


過去を振り返れば、人には必ず、何らかの黒歴史がある。
俺の高校時代は「小室哲哉」がやたら流行ってたのだけども、青春時代を明るく照らす星明かりの下には、くっきりと陰を落とす不安な黒さがあるわけで。
例えば、俺の友達にYくんという男がいたけども、彼なんぞ小室ブームの煽りを思っクソ食らった挙句、「プロデューサーになりたい」とか割りとガチな感じで吹聴してたもんだった。
今思い返すとホントにトホホというか。

Y君は「ケイちゃん」という女の子が好きだった。

ケイちゃん、ショートカットにそばかすがあるちょっと可愛い感じの子でして。
たしかバスケ部かなんかだったけども、割りと人気のある、明るい女子高生だった。
んでY君はある日、俺にこんな事を言った。

「あしの君……」
「ん?」
「俺さ、ケイちゃんをプロデュースしたいんだよね」

おれはもうこの時点で食ってたレタスサンドウィッチをブハンと吐き出しそうになったんだけども、笑っちゃ悪いなと思って耐えた。

「ああそう」
「どう思う」
「いいんじゃない? プロデュースしちゃえば」
「いいかな?」
「やっちゃいなよ。プロデュース」
「うん!」

しばし、コーヒー牛乳をのみつつ沈黙──。
すっかり妄想の世界に逃げ込んでニヤニヤと手弁当をカッ込むY君に、俺はこう聞いてみた。

「ねえY君」
「なんだい、あしの君」
「どんな感じに?」
「……え?」
「どんな感じにプロデュースするの?」

意識して真面目な顔を作りながら尋ねると、彼はちょっと上を向いて何事かを考え始めた。
そしてボソッと。

「ビーマイナーかな」

と言った。

「ビーマイナー?」
「あ、ちょっとむずかしかったかな……」
「Be minorって事? マイナーになれ? メジャーに逆らう的な?」
「いや、ちがくて、コードの……」
「え、Bmの事?」
「そう。そんなイメージ」
「暗いじゃん。彼女すげー明るいよ?」
「いやでも……」
「でもじゃなくて、Bmはないわ。フォークかっての」
「そうかなぁ。暗いかなぁ」
「オウフ……ちょっとまってY君。知ってる? Bm、どんな和音か知ってる?」
「……もちろん」

あ、こいつ知らねぇな。と。
その泳いだ目を見ながら思った。

斯くの如き也。

プロデュース云々とか、ビーマイナーってつぶやいてみたりとか、こういうのは完全に黒歴史だと思う。Y君アホだったんで多分忘れてると思うけども、その黒歴史は本人の歴史のページというよりも、「それを身近で食らった第三者」のハートにしっかり刻まれて、墓まで持ってかれるのです。

今回はそんな話。

●悪い子供。

さて、黒歴史のホットスポットというと、大抵の人にとっては「中学」あるいは「高校時代」だと思う。
俺も正直その頃は結構キテた。
思い出すと毛布に包まったまま白目向いてガクガク震えるしかなくなるんで何も語らないけども。
ああ駄目だ。なんかちょっと思い出しただけで死にたくなってきた。

中二病って割りと普通の事だと思うのね。
その言葉が厳密にどう定義されてるのか知らんが、とりあえず「自己の相対化が未熟なまま自我が拡大した状態」が中二病の定義だと思うし、それって要するに「普通の子供」の事だよね。みたいな。
だから冒頭の「人には必ず、何らかの黒歴史がある」ってのも、まったくもって普通の言葉なのです。

で、まあ俺の中で封印されし108の黒歴史の中で出していいエピソードを一発だけ放つとするならば、「ポエマーだった」というのがある。

ポエマー。
詩人である。
そう、詩を書いてたのだ。
しかも出来が良いのが完成するとクラスメイトにすげー読ませてた。
んで「イマイチな反応」が返ってくると「ふん、芸術の分からんやつめ」みたいな感じでちょっと見下したりしてた。
さらに言うとその詩も「銀色夏生」先生のパクリだった。
社会人になって数年経ち、久々にエーコ婆ちゃんの所に帰ったら勉強部屋から発掘されたと思しき「自作ポエムノート」が当たり前のように本棚に並べられてて「ギャー!」ってなった。
内容とかすっかり忘れてたんで恐る恐る手にとってみたんだけども、まずタイトルが『パントマイムでさよなら』だった時点で普通に鼻水でた。
速攻裏庭で燃やしたもん。
火で消毒! 穢れは火で消毒だ!
バーン・イット・オール!
Y君の方が全然マシじゃねぇか!

まあね。

こういうのはホントいいんだよ。
誰しもが通る道だ。
俺もしかしてすげーいい声してんじゃねぇかと思って「メンバー募集! 当方ボーカル」みたいなハガキを「バンドやろうぜ!」に送ったりさ。いたじゃんそういう子。な。
それと同じ。相対化が未熟なんだから仕方ない。
分かってないのだ。森羅万象、有象無象の中で、自分がどれくらいの位置にいるのかとか。
何ができて、何ができないのかとか。
どういうものが生み出せて、どういうものが生み出せないのかとか。
なんもわからないんだから。
仕方ない。
要するに子供なのです。

でだ。

俺の中学の頃の友達にE君という男が居たんだけども、彼は高1にしてホール通いしてた。
途中で学校来なくなったんだけども、まあ彼の人生を狂わせたのは「パチンコ」だった。

●クソダサかったE君について。

E君なー。途中までスゲー仲良かったんだけども、なんかちょっと途中でグレてさ。
しかもそのグレ方が超ダサいというかね。
あまりにしょっぱかったんで一切の付き合いを断ったんだけども、なにしてるんだろ今。
本人に聞いたらまた違うのかもしれんが、そもそも彼がグレたきっかけは近所のゲーセンでのケンカだったっぽい。

当時は「バーチャ2」がめっちゃ流行ってたんだけども、彼そこで対戦相手に(中身の入ってない)灰皿を投げるだかなんかしてさ。
相手はどうみてもチンピラの人だったんだけども、まー勢いでやったのかもしれんが、当然チンピラの人はそんなの許してくれる訳なくて、髪の毛引っ掴まれて便所まで引きずられてボコボコにされたらしいのね。
当時のゲーセンにおいてはホントに良くある光景だったんだけども、ガタイは(高校一年生にしては)デカいといえども、一人っ子で母子家庭だったE君に「人からボコボコにされた経験」なんざあるわけもなく。
彼はそのゲーセンには二度と来なくなった。

んで学校帰りにその場所に溜まるというのは、中2の頃から続いてた俺らのイニシエーションみたいなものでして。必定、バーチャファイターという最高の遊び道具を奪われた格好のE君がハマったのが「パチンコ」だったのね。

E君、目に見えてグレてってた。

グレるというと、普通見た目からグレるんだよ。
でも彼はダサいまんまで急激に行動だけが小悪くなってた。
そう、すげー悪い訳じゃなくて小悪い感じ。
なんかもうお婆ちゃんとかがやってる古い駄菓子屋とかで万引きしたりとか。
それもう、その辺の腕白坊主とか小学校くらいで怒られて卒業してるレベルの悪事なんだよ。E君高校デビューでそれだからな。目も当てられないダサさ。
んで「こいつマジでカスだな」と思って一切の付き合いを辞めたところで、E君は高校を自主的に退学した。

これねぇ。
含蓄のある話だよ。
なんせ当時のパチつったら「大工の源さん」とか全然現役だから。
学生が使える金なんざたかが知れてるし、彼はバイトもやってなかったから、その金をどこでどう工面したか考えたくもないんだけども、うっかり当たったら源さんはその金を何倍にもしてバックしてくれるからね。
知らない人の為に説明すると、源さんは「確変2回ループタイプ」の台だった。
確変割合が「1/3」である代わりに「2回連続で通常絵柄引くまで確変が続く」感じ。
んで確変終了後はバッチリ100回転の時短までついてた。
もちろん今で言う出玉ナシ大当たりとか、4ラウンドの当たりとかはなし。
全ての当たりに10カウント16ラウンドの出玉がバッチシついてくる。
要するに超爆裂台だった。
今の牙狼とかと比べてどっちがどうなのかとかは正直パチンコ打たないので知らんが、スロにおける「ミリオンゴッド」みたいな立ち位置の台がコイツだと考えると、そんなに外れてないと思う。

で、こないだまで中学生だった子供がこれでうっかり20連とかしたら、エライ事だよ。
学校なんてバカバカしくていってらんなくなる。
しかも周りは大人ばっかだし、そもそも当時はまだホールって魔窟ですから。
だいたい明らかに未成年であるE君が通ってて何も言われない時点でお察しなんだけども、「俺ってスゲー最先端」みたいな妙な全能感めいた勘違いは絶対あったと思う。
それで変な具合にグレて小悪くなったんだろう。

要するに、彼は高二病だったわけです。

パチがなけりゃ、とは思わない。
ゲーセンでのケンカがなけりゃ、とも思わない。
育った環境だとかなんとか、偉そうな御託を並べるつもりもない。
ただ、中学の修学旅行先で、旅館抜けだして一緒にゲーセン行った日が懐かしい。

今彼が何やってるかサッパリ分からんが、15年くらい前に一回だけ見かけた時は「あれ、こんな頭デカかったっけ?」みたいなボンバーヘッドになってた。
俺はちょうど当時付き合ってた彼女が運転する車の助手席に座ってたんだけども、信号待ちの間で、直ぐ横の歩道を歩くE君と目が合ってさ。
それなりに懐かしかったし、窓あけて挨拶しようかどうか迷ってる間に信号が変わって、それっきりだった。

「……フン」

タバコふかしつつちょっとだけ鼻を鳴らすと、ハンドルを握る彼女が口を開いた。

「ひろ、今の友達?」
「……さあ」

なんかちょっと、ふにゃりんこな気分だった。

「──知らない奴だよ」

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コメント

  1. 師匠2 より:

    あー俺も高校生の時にひたすらパチ打ってたな。当時はゼロタイガーで小銭を稼ぐのがせいぜいなんて時代だった

    • ashino より:

      師匠。
      チワッス!
      大体今打ってるオッサン連中は高校くらいからやってるイメージですねぇ……。