【自分語り#3】家電量販店地獄篇(前編)

自分語り

人の生の道なかば
ふと気がつくと、私は正しき道の失われた
暗き森の中をさまよっていた。

ダンテ・アリギエーリ『神曲』地獄篇対訳(藤谷道夫)より。


なんかもう詳しく語るのをずっと我慢してたのだけど、いよいよ辞めちゃったし、この辺で気持ちの整理を付ける意味でも、一回思いっきり書いてみようと思う。
さあ。今日は「家電量販店」についてだ。

俺はつい先日までライターと家電量販店勤務の二足のわらじを履いていた。
場所は「日本中」である。
むっちゃ飛び回っておった。
『インタビューウィズスロッター』の最初の方の話は、ほぼホテルで書いてたからね。
役割もその時々で様々で、ある時は回線営業のお兄ちゃんだったり、または営業部員だったり、あるいはトレーナーだったり、そして、ただの販売員だったり。
その時々でより条件の良い方にポジションをクイクイと調整たり、あるいは掛け持ちしながら、何だかんだで5年以上勤めておった。

うむ。
家電量販店界広しといえども、俺ほど色んなポジションや会社・店舗を経験しながら短期の間に濃密な経験をした人間はそんなに居ないと断言できる程度には、ガッツリやらせてもらいました。

この経験は割と貴重だと思うし、ものを伝えるのが俺の役割だとするのなら、どんどん伝えて行かねばならんので、ちょっと皆さんに共有したい。

家電量販店が一体どんなところなのか。
知られざる、その内幕について。

それではお読み下さい。
どうぞ。

●家電量販店基礎知識

まず基礎。
家電量販店の種類についてだ。
とりあえずまとめると以下のようになる。

・ヨドバシ
・ヤマダ
・ビック
・ケイズ
・エディオン
・その他(ノジマとかオノデンとかジョーシンとか)

以上。
あらッ! 少なッ! と思うかも知れないけども、大体これだけ覚えておけばいい。
例えば「コジマ」や「ソフマップ」は既にビック傘下だし、「ベスト電器」はヤマダ傘下だ。
昔からアキバに通ってた方にとっては馴染み深い「石丸電気」も今はエディオンだし、こっちは量販じゃないけども「九十九電機」なんかはその石丸傘下から今はヤマダ傘下になったりと、無数に存在していた家電量販店もかなり統廃合が進み、一時期の群雄割拠状態からだんだん天下三分の計に近づいているのが現状である。
これらのグループは勿論全店共通する特徴もあるのだけども、家電量販店と一括りには決してできないくらい、カラーに違いがあったりする。
ただ安い、とか高い、じゃなくだ。
まずはこれを紹介せねばなるまいて。
早速みてみよう。

●ヨドバシ(★5)

まずヨドバシ。
もう初っ端でいきなり最高。
今後みんな買い物はヨドバシでやったほうがいい。それくらい良い。
値段はそんなに安くないけども、気持ちよく買い物したかったらヨドバシ一択だ。
ヨドバシはとにかく労働環境がめちゃくちゃいい。昔はブラックの代名詞だったらしいけど、ちゃんとそれを反省してスーパークリーンな企業へと見事な脱皮を遂げている。
だので、まず売り場の雰囲気がめちゃ明るい。みんな心にゆとりがあるのである。
一部やべぇ店舗が残ってるとの事だけども、俺が思いつくのは一店舗しかないし、その店舗はほぼカウント対象外の店舗なんでシカトしていい。
んでこの「売り場が明るい」みたいなイメージって結局は「気持ちの良い接客」であるとか「行き届いたサービス」に繋がり、ある重要な流れが形成されている。

それが「多少高くてもヨドバシで買いたい」というお客さんの出現だ。
これマジで重要。

はっきり言って、家電量販店のお客さんにはヤベぇ奴が物凄く多い。場所にもよるけど、足立の某店とかフリーク・ショーみたいになってた。そしてそいういう人は単純にお金が無かったり、あるいは転売目的だったり、要するに接客なんかどうでもいいから『安さ』をひたすら追い求めておるのである。
そしてそういう『安さ』しか見てない人はめちゃくちゃ値切るし、自分の希望の金額まで値切れないとなると不機嫌になる。結果、店側の些細な瑕疵を探して値切りの材料にしようとしたり、あるいは単純に値切れなかったという敗北感を払拭する捌け口として、必要以上にキレるのである。
要するにクレーマーだ。

ヨドバシには、コレがほぼ無い。
理由は簡単で、ハナから値切りが難しいからだ。
そりゃ他店に倣って最低価格保証はあるけど、ここで言う「値切り」はそういうシステマティックなプライスダウンではなくて、一時期流行った「値切りの達人」式のアレである。金子哲雄さんもう亡くなったそうだけども、とりあえずそれが効かない。だので必然的にヤベェ奴も少ない。したがって売り場でクレーマー相手にペコペコすスタッフを目撃する機会も少ないし、結果として非常に平和な世界が出来上がっている。
あ、回線は違うよ。回線はどこいってもクレーマーだらけだからいい。それ以外の売り場の話だ。

とにかく、貴重な休みの日に買い物しにいくのにワザワザ変なオヤジの怒鳴り声を聞きたくなかったらヨドバシ。これはもう心のメモ帳にしっかり書いて大事な所に仕舞っといたほうがいいレベルで大切な事だ。
そしてヨドバシは売り場がめちゃキレイで分かりやすい。これもまたシステムの話になるけども、要するに価格を店舗側で勝手に下げれない分、価格表示のPOPなどが少ないのだ。他の店とか「いったいどれが正解やねん」ってくらい色んなプライスがモリモリ貼ってあって非常に汚いし分かりづらいけども、ヨドバシにそれは無い。この辺もスムーズに買い物出来てありがたい。
何から何まで最強。至高にして究極の量販店。それがヨドバシカメラだ。

もっかい言うぞ。買い物するならヨドバシへゴーだ。

●ヤマダ電機(★3)

ヤマダ電機に纏わる噂として「ヤマダで働くと創価学会に誘われる」というのがある。
まことしやかに囁かれてる都市伝説の類だけども、流石にそんなことはないので安心して欲しい。
ただ「公明党」への投票は呼びかけられる。
そして休憩室には当たり前のように「聖教新聞」が置かれてる。
言葉で勧められないだけで、言外にグイグイ誘ってくるので初心者は注意だ。
あと、ヤマダ電機は頭がおかしい社員が多い。
売り場でいきなり「第九」を歌い始める人とか。バイトの女の子と平然と不倫しつつ休憩室でチューしてるシャクれたオッサンとか。入店初日に先輩に挨拶してるだけで「私語するなら帰れ!」と怒鳴り散らして売りモンを投げつけてくるハゲとか。全部ヤマダである。
働くには最悪に近い環境に思えるけども、それを補ってあまりある美点もあった。
サボり放題なのである。
これは「ヨドバシ」の項で述べた「ヤマダの異様な安さ」と、それからその社員評価システムに起因している。
どういうことか?

まずヤマダは兎にも角にも「安さ」の一点張りで量販店界に勝負を掛けている。
商品説明とかどうでもいい。下手したら「値引きしましょうか!」から接客がスタートする。
そしてその「値引き」が出来るのは売り場に数人いる社員だけで、その他の無数のヘルパーには手出しができない。つまり、ヘルパーは一杯居てもレジまで持っていけるのは社員だけであり、社員は常に忙しいけどもヘルパーはクソ暇という謎の状況が生まれがちなのだ。
つまり、暇を持て余したヘルパーたちはまず第一にサボる事を考えるのである。

次にシステムだけども、ヤマダはチームではなくて個人成績で動いている。
つまり、ヘルパーがうっかりレジにそのままお客を持っていくと、レジの人間の販売成績になっちゃうのである。そうすると売り場の担当社員がプンスカするので、これはもうルーチンとして、どんなに社員が忙しそうにしてても、一回振って値引きさせてレジに持って行かせないとだめなのだ。

まとめると、値引きありきの接客なのにヘルパーが値引き出来ず、そして社員が個人成績を追いかけているのでヘルパーが邪魔者扱いされがち。 これが「ヘルパークソサボり状態」に拍車を掛けている元凶であると思う。

ちなみにヤマダは大きく分けて「テック」と「ラヴィ」に分かれる。どっちもどっちではあるのだけども、特にサボりまくれるのは「テック」である。外出禁止なのが唯一の欠点ではあったけども、「モンハンクロス」の村クエはほぼ店内で終わらせる事ができた程度にはサボりまくれた。
だので、今思い返せば家電量販店時代に笑えたエピソードの八割くらいはヤマダに集中してる。
一回「オカティス」さんという友達がダンボールで棺桶みたいなベッド作って、売り場で普通に熟睡してたのは今思い返してもかなり笑えるし、あとは謎にビックリマンシールが流行ってみんな当たり前のように売り場でトレードしてたり。
それから営業中にインカム使って「来年公開されるランボー10のタイトルは?」「ドスケベランボー悶絶10連発」とか、大喜利みたいな事をみんなで3時間くらいやったりとか。
今思い返すとほぼ仕事してなかった。

結構いい職場だったな……。

お客さんとして行く場合は、とりあえず「安さ」以外を気にしなければ大丈夫。
郊外のテックに行く場合はたまに警察が出動するくらいの、魔術士級のクレーマーがゴリゴリに騒いでる場合があるけども、まあ近づかなければ大丈夫。売り場汚いけど、そこも安さの前では小さな問題である。あ、朝一に都市型店舗に行くと、中国人転売屋に雇われた特売品目当ての乞食のおじさん達が物凄い並んでるけど、同じレジに並んじゃ駄目だからね! そこだけ注意!

●ビックカメラ(★2)


あくまでも中で働く場合の話になるけども──。
ビック系列は「コジマ」とか「ソフマップ」があるが、特にビック本体を一言でいうと「体育会系」のノリが合うか合わないか。ここがデカいと思う。
他のお店は「おつかれさまです」が基本の挨拶なのだけども、なぜかビックだけは「ごくろうさまです」と言わないと怒られたりする。あとよっぽど泥棒が多いのか入店・退店時の荷物チェックが空港なみに厳重でクソ面倒臭い。信じられない事に金属探知機まで使うからな。んでそれを振るう警備のジジババが自分を神とでも思ってるかの如く尊大な態度なのも見逃せない。
たかだか携帯カバーの持ち込み申請をひとつ忘れただけで、他社の営業の人間にタメ口で物凄い説教してくるし。もう俺ビック回るのイヤ過ぎて今は客としても行きたくないもん。

あとこれはビックだけの文化かも知れないけども、POS売価(レジの値段)と売場の表示価格が全然違う場合があるのね。普通同じか、表示価格の方が高いんだよ。
例えば売場で「1000円」って書いてある商品をレジに持ってって「1500円です」って言われたらみんな怒るじゃん。「900円です」って言われても怒らないけど、高くなったら怒るよね。だからこれはヤマダですらまずあり得ないんだよ。ちゃんとPOS売価を打ち替えてから特売のPOPを貼るのね。でもビックのとある店舗は他店に合わせて細かく特売のPOP貼りすぎて、レジ売価の方が高い、という現象が物凄い起きててさ。
それで一回俺もクレーム食らったけども、俺POS売価が信頼できない店なんて生涯で初めてだったんで度肝を抜かれたもん。繰り返すけど、表示価格の方が高いのは良くあるのよ。「あ、お客様、実はコレ安くなってました。イエーイやったぜお得!」みたいなパターン。これは全然ある。ヨドバシですらある。
逆だからね。「あ……。すいません実はコレ高かったッス」みたいな。
パチスロに例えるとチャンス目かリーチ目か分からない出目で実は入ってました、みたいなのは全然あるじゃん。でもリーチ目出てるのに実はチャンス目でしたって言われたらもうそれバグじゃん。保通協激怒でしょう。それと同じ(どこが)。
んでそれ報告したら「レジで割引しろ」って怒られたり。勝手に割引したら激怒するくせにだよ。
なんかもう脳みそがシャバシャバ過ぎて駄目だった。
レジが怖い、というのは家電量販店あるあるではあるのだけども、その店は前述の体育会系とそれがいい感じで化学反応を起こしてて、ホントにクソ怖かった。
いやだよこんな店で買い物すんの……ってマジで思ったもん。

他にも、ちょっと売場のリーダーみたいな奴に挨拶するのが遅れただけで売場出禁とかいう謎の沙汰を食らったり。店によっては幾ら社員証見せても名刺切らしてたら営業入店すら出来なかったりする一方、顔見知りはスルーだったりとか、ルールに厳しいのか緩いのか全然分からん感じがすげー頭悪そうで嫌だった。

ちなみにソフマップとコジマは除く。
特にコジマはゆるゆるで楽しい店舗だし今後も買い物したいんで★ひとつプラス。

お客さんとして行く場合、とりあえず近所にまず間違いなくヤマダがあるんで、相対(あいたい、と読む業界用語。値下げ合戦)を狙うのがオススメ。事実上、ヨドバシは値下げバトルからオリてる状態なので、ビックはヤマダを。ヤマダはビックを宿敵視してる節がある。ヤマダはあんまり深く考えないで適当に値下げするし、ビックは体育会系の「敵チームに負けるな」のノリで相対に乗る事が多いイメージ。

一応やり方を書いとくと、「まずヤマダに行く」のがポイント。(※1)
んでその売場で一番やる気がありそうな(つまり個人成績がほしそうな)店員さんに話聞いて、適当に値段を出してもらい、名刺に値段を裏書きしてもらう。
んでその名刺持ってビックに行って「腕章付けた人(※2)」を捕まえ一言「コレより安くなりますか」といえばオーケー。
なんならその値段を更に先ほどのヤマダに持ち込んで限界までピンポンラリーにチャレンジするのもあり。繰り返すけど「ビックとヤマダ」の間にのみ通じる作戦なので注意ね!
あと、やりすぎるとゴミを見るような目で見られるよ! マゾにオススメ!

※1 ビックは転売屋にうるさい部分があるので意外と名刺の裏書きしてくんないかも。
※2 ビックで腕章付けてる人は実はただの案内係じゃなくて責任者。割引するのはこの人。

●ケーズデンキ(★4)

郊外店の雄。ケーズ。
ケーズデンキの雰囲気を一言でいうと「激ユル」だ。
なんせ社是が「頑張らない営業」だからね。マジで。
社員に課せられてるノルマみたいなのも特に無いか、あるいは負担にならない程度のものらしく、家電量販店に良くある「もう一品の取り組み」とか「ARPU(アープ:平均単価)の底上げ」とか「付加価値への取り組み」みたいなスローガンはゼロに等しい。
他の家電量販店が「北斗の拳」みたいな生きるか死ぬかの世界観でやってるのに対してケーズは一人だけ「ちびまる子ちゃん」の世界観でやってますみたいな感じ。
実際ケーズが「ちびまる子ちゃん」をイメージキャラに選んだのってそういう意味だと思う。

この頑張らなさは働いてる人間にとっても非常に楽ちんだしノンストレスで有り難いのだけども、お客さんにとっても「要らんものを何だかんだと勧められることが無い」という「買い物のスムーズさ」の点でプラスに作用してる。
あと、郊外店であるがゆえに基本暇なのもデカい。
ヨドバシやヤマダなどは社員がなかなか捕まらずに無駄な待ち時間が発生する事も多いけども、ケーズにその心配はない。誰かしら空いてる。スッと行ってスッと買う。セリフはひとつ。「コレください」だ。基本無駄な説明や案内は無いと思っていい。

頑張らない営業。
これは迫りくるノルマに忙殺される現代人にとっては癒やしに近い。
無駄な値引き交渉を避けるためか値段も最初からズバリ価格で表示してあるし。
単純にサクッと家電買いたいなら安牌な店だと思う。

そしてもし最近家電量販店系での仕事を方で、配属がケーズに決まった方がいらっしゃったらこういいたい。おめでとう。めくるめくおサボりの世界へようこそ──!

●まとめ。

以上である。
あと「エディオン」と「ノジマ」があるけども、これらに関しては語ることがないので割愛する。
とりあえず言いたいのは、量販店って色々あるけども、その中でも最強はヨドバシですよと。
単純に安さだけ追うならヤマダとビックでピンポンすればいいし、短時間でサクッと買いたいならケーズがオススメ、みたいな。まあ用途によって使い分ければ良いだろう。

さて。
今回はとりあえず「家電量販店地獄篇」の前編として、量販店ごとの特徴を書いてみたけども、次回、後編では「それら全部に共通する嫌な部分」を書いてみたいと思う。
どっちかっていうとそっちが本題なんだけどな。ここまでが長すぎて急遽分割。えへ。
お楽しみに。

コメント

  1. すらぁ より:

    あしのさんのこういうコラムにやにやしながら読めるから大好きです!さいこー

    • ashino より:

      すらぁさん。
      チワッス!
      えへへ。ちょっとだけ昔の雰囲気を取り戻してきた気がします。
      まだまだですけどね! 精進しやす!! イエア!

  2. ふん。 より:

    あしのさん楽しみにしてるよ( ´∀`)

    • ashino より:

      ふん。さん。
      チワッス!
      後編、やっとアップしました……!
      よろしくオナシャス!

  3. クビキ より:

    チワッス
    やっぱヨドバシかぁ。
    客としてだけど、違いというか、売り場の空気感というか、なんか分かりますもん

    • ashino より:

      クビキさん!
      チワッス!
      やっぱわかりますか。そうなんですよ。ヨド最強です。マジで。もう俺ヨド以外で電化製品買いたくないですもん!