【実戦日記】人生初スロの女2019。

実戦日記

「おやーー、こいつぁ……いやーそれがよーー……アガッてんでぇ、まいちゃうなー、こりゃ天和だ!」

『哲也~雀聖と呼ばれた男~』より。房州のセリフ。


俺が子供の頃暮らしていた長崎には「初売り」という文化がある。
まあそんなもん日本全国に掃いて捨てるほどあるし、第一、今では仙台のそれが頭三つくらいブチ抜いて超有名になってるのであんまりデカい声でいうほどの事ではないのだけども、わがうぶすなの初売りもまた、しれッとWikipediaに載っている程度には知名度がありまして……恥ずかしいからあんまり言うほどの事でもないけども、地元民にとってはワクワクするようなイベントの一つになっておるのです。

まあイベントとしてそれなりに有名になってるからには何か尖った特徴があって然るべきなのだけども、我が街の「初売り」にも勿論そういうユニークなポイントがある。
それがもはや一点突破の潔すぎる特徴なんだけども、要するに「めちゃ早く店が開く」というのがそれだ。
マジで鬼早いよ。1月2日の午前3時とかには余裕で開く。
(代わりに元日の営業は商店街の組合が禁止してた気がする)

そんで一応福袋であるとか色々用意してはいるんだけども、今思えばそんなに安くは無かった。
ただ早く開く。それが我が街の「初売り」のアイデンティティであって、その「早く開くこと」がそれすなわちワクワクするようなイベントだった時期というのが、俺の中にも確実にあったのです。

なんせ小学生にとって、お正月とはイコール「お年玉」である。

田舎の人は大体親戚がめっちゃ居て、それは俺んちもまた例外ではなく、しかも我が家の婆様は一族で最高齢の「長老」であったことから、毎年元旦になると朝早くから遠方の親戚が一個小隊くらいの数わらわらとやってきては、バンバンお金を呉れた。まあ今思えば小学生が貰える金額なんて千円とかだし、たぶん総額で2万円とかだったと思うけども、それでも当時の俺にとってはデカ過ぎる金額だった。
まず万券が手元にあるのが異常事態だし。
ビックリマンチョコ無限に買えんじゃねーかコレ。とか。
オイオイ、部屋がミニ四駆だらけになって座る所無くなんぞ。みたいな。
あまりの僥倖にガクガク震えながらお年玉制度に感謝しまくっておった次第。

まさしくお年玉バブル。
あぶく銭である。

そしてそんなあぶく銭を思う様ぶつける最強のイベントが「初売り」であって、当時の我が街のガキ共は、みな朝の3時とか4時に待ち合わせして、臨時ダイヤで深夜から市内を走りまくる市営バスに乗り合わせ、商店街の方にキラキラした目で向かってはボラれたりカツアゲされたりしてたもんだったのである。古き良き時代の話だ。
まだあんのかなー初売り……。今結大人がうるさいから、子供一人で行ったり出来なくなってんだろうなぁ……。

●何が言いたいかというと。

でまあ、何が言いたいかというと、この「初売り」もまた「毎年恒例の行事」であって、ある程度ルーティン化されてる事によってはじめて「お正月感」の醸成につながる訳で。
例えば「お雑煮」であるとか「おせち」であるとかね。それから「初詣」もそうだけども、そういう「毎年必ずやる何か」というのがあって初めて「行事」としての意味合いが出てくるのね。

でね。
そういう意味では俺、大人になってから全然お正月してないのね。
まず「おせち」食わねぇし。「おとそ」とか何年飲んでねぇか分からん。
初詣も何年かに一度行く程度だし、年賀状もまず出さねぇ。
駄目な大人だけども、それ以前に正月の意味がなさすぎる。
全然めでたさがねぇ……。
何も行事をこなさずに、何がハッピーニューイヤーですかと。

というわけで、実は今の嫁さんと出会ってから、正しくお正月を楽しむため。
あるいは、お正月気分の醸成のために、意識的に毎年行っている事があるのだ。
実際これやり始めてから毎年かなり正月らしくなったと我ながら思う。
やっぱ文化って大事。何事も三年続けば文化だ。
さあそれは一体なにか──!
そう! 正解は「夫婦で浅草ロック座(ストリップ)の新春公演を観にいって、帰りにホールに行く」というものだ! よっしゃきたー! ブゥゥン! イエーイ!

……いや、分かってる。
なにかが絶妙におかしいのは分かってるのだ。
でも今年でもう三回目だし、恒例行事化してるから仕方ない。
ストリップからのパチンコ。もちろん酒もガッツリ飲む。
今年なんかもはやスケジュール表にだいぶ前から「ストリップ&パチンコ」って書いてたからね。なんなら頭に「新春恒例!」ってつけてたし。猫のイラストまで描いてやったもん。すでに楽しみになってるからコレ。いいじゃないか。

でね、こっからが大切なんだけど、実はうちの嫁……。って言い方もなんか偉そうで良くない気がするから「オクタン」っていうね……オクタンはパチンコとかパチスロがあんまり好きじゃないのね。
一応それで飯食ってる俺の手前、あんまりボロクソに貶したりはしないけど、今までの人生でパチンコとかパチスロとかを打った事が一度もない人だったの。オクタン。
でねぇ、俺はもうオクタンとパチスロとかパチンコとかをやっぱ並んで打ちたいのね。
駄目なんだけどね基本。やんない人をあんまり誘っちゃ駄目なんだけど、やっぱ楽しいことは一緒に楽しみたいじゃんね。あといいとこ見せたいしさ。なんか隣でビタ押しとかビッタビッタ決めて、「ウチの旦那さん凄い!」って思われたいじゃん(思われねぇよ)。
というわけで年に一回だけ。拝み倒して一緒に連れ打ちを了承して貰ってるんだけど、それが今年で三回目なのね。ちなみに縁起モンと割り切って1機種1K一本勝負。今までの夫婦合わせての戦績は以下の通り。

一年目
俺 1パチ CRリング呪いの7日間(甘デジ) → 当たらず
嫁 1パチ CRリング呪いの7日間(甘デジ) → 当たらず
収支 -2K

二年目
俺 1パチ CR地獄少女2(甘デジ) → 当たらず
  1パチ CRリング呪いの7日間(甘デジ) → 当たらず
嫁 1パチ CRベルサイユのばら(甘デジ) → 全回転大当たりからのまれ
  4パチ CRマイケル・ジャクソン(1/319) → 3回しか回らず
収支 -4K

こんな感じ。
今気づいたけど地獄とか呪いとか、全然縁起良くないし藤商事ばっかりだけど、注目すべきは去年オクタンはベルばらで全回転引いてるという部分。これぞビギナーズラックだ。1パチだけども。
というかまあオクタンはパチンコの事何も知らないから俺ばっかり「熱いッ」とか「いいよッ」とか言っててまあまあ恥ずかしかったのを覚えている。

で、今年だ。
例によってまずは浅草ロック座で新春公演見てからマイホへ。
パチ屋に行くのはオクタンも恒例行事として承知してくれてるのでこの辺はスマート。
しかし気を抜いては行けない。途中でグズったら台無しになるので、いい感じにご機嫌を取りながら向かう。
なんかアレに似てる。若い頃とかに、女の子をホテルに連れ込む時の心境に。
んで今年はもう俺、二人で並んでパチスロ打とうと思ってて。
やっぱりメダルの入れ方とかレバオンの方法とか教えたいじゃん。
去年までは「1K勝負だからちょっとでも長く遊べるように甘デジ」とか「リール制御よりも液晶演出の方が初心者には楽しみ易かろう」とか色々考えてたんだけども、そういう小細工(?)はもう卒業して、一回直球投げてみようと思ってさ。
で、何が直球かっていうとやっぱジャグラーだと思うのね。
すっごい悩んだんだけども、ここはもうジャグラーだよ。
こないだ一緒に沖縄いったし、思い出を振り返る意味を込めてHANAHANAかなーとか。むしろもう一周回ってGODかなーとか色々考えたんだけど、ここはやっぱジャグラーじゃねえかなと。達観に近いよね。なんだかんだいってジャグラー。昔はこういう場合に台をチョイスする時に絶対ジャグラーは選択肢に無かったんだけども、最近俺はあのピエロを許容できる大人になったしさ。大体分かりやすいじゃん。ペカるし。GOGOランプ。正月から縁起イイじゃんなんか。夫婦仲もペカるよたぶん。というわけで──。

「ねぇオクタン。まずねぇ、お金をねぇ、横っちょの所の自動販売機みたいなのあるじゃん? そこにブチ込んでみて」
「これか……」
「そう。そうすると、メダルが47枚出てくるのね」
「……47枚?」
「まあ、最近色々あって変な数字になってるけど、出てくるじゃん。ほら」
「うん……」
「そしたらねぇ、ここんところにメダル入れて……。レバー叩くのよ」
「うん……」
「はいレバー叩いて……──はいリール回った! そしたらボタンを適当に押して……三つ」
「こう?」
「そう。はいあと2つ。そう! よし! はいブドウ揃った! 天才!」
「……これ何が面白いの」
「まだまだ! まだ全然! こっからこっから……! ほら、ここの所にさ。GOGOランプあるじゃン?」
「……コレ?」
「そう。それがペカったら当りだから」
「ペカ……?」
「そう。ペカッてなるのよ。ペカったら分かるから」
「光るってこと?」
「まあ光るとも言うけど、ペカるのね。とりあえずペカるから。ペカったら教えて」
「うん……」

俺も自分の台に向き直り、サンドに千円札をブチ込んでメダルを借りる。
3枚ずつメダルを入れながらヨチヨチとプレイするオクタンを尻目にドヤ顔でトゥルトゥルと15枚くらいまとめてメダルを投入し慣れてる感をアピール。フフンと鼻息を鳴らしつつレバオン。

「あ。ペカった」

オスイチ当り。
チェリー重複である。

「ちょ、オクタン。みてみて! 俺当てたよ! 当てた!」
「……ほんとだ。当たるんだねぇ」
「あー! 惜しい。レギュラーだよ。ちぇ。残念」
「なに? レギュラー?」
「100枚くらいにしかなんないの。7揃ったらもっと一杯でるのよ」

しかし今年一発目のレバオンでいきなり当てるとは。
なんと幸先がいい。こりゃあ今年はなかなか良いかもしれんな!
とか思ってレギュラーを消化。
さて、ここで辞めたら今年の初打ちは勝利で終わるけど……。
その時俺は我が目を疑った。
オクタンの台のランプが光ってやがるのだ。
マジ二度見した。漫画みたいに二度見した。

「ちょ! オクタン、ペカってるよ!」
「あ。これ? ペカってるの?」
「そう。これ! ペカってるじゃん!」
「これペカってんの?」
「そうだよ。めっちゃペカってるよ!」

左から手を伸ばし、7をテンパらせる。
最後のリールは……。

「オクタン、このリズムだよ。自分で揃えてみ。ポン……ポン……ポン……」

真剣に台に向き合うオクタン。
人差し指をタクトみたいに振ってリズムを示す。
ポン……ポン……。

「ポン!」



「揃ったよ! 7!!」
「揃ったね! やったね!!」

オクタンの生涯初スロ戦績。
『ファンキージャグラー』で見事BIGを射止め、勝利で終わった。

三年目の結果。
俺&嫁 20スロ ファンキージャグラー → +1.5K

メダルを流し、交換し、TUCショップで行われる秘密の儀式までの一連の流れをオクタンに見せつつ、浮いたお金をポッケにブチ込んで、ホッピー通りへと向かう。

「オクタン。今日は好きなもの食べていいよ」
「ほんとに!?」
「うん。オクタンのおかげで浮いたからね」
「やったー! ねぇねぇ……日本酒飲んでいい!?」
「飲みな飲みな!!」
「やったー!!」

──年に一度だけのパチスロ。
お正月の恒例行事って、こうやってだんだんホントに恒例になっていくんだろうな。と思った。
また来年、いこうじゃないか!

コメント

  1. 師匠2 より:

    最近の台だとこれから始める人に勧められる状況に無いのが辛いね。昔は勝つために努力すれば、どうにかなったじゃない。特に学生とか時間さえあれば勝てるみたいな状況がね。これから更にきつくなるからハマらないようにね〜

    • ashino より:

      師匠
      チワッス!
      そうなんですよねぇ。4号機といわずとも、せめて三年くらい前に一緒に打ちたかったなぁ……。