半年ほど前の事である。
仕事終わりに秋葉原の某店に立ち寄った。
暫く店内を闊歩しつつデータマシンを舐めるように見回したのち、まあこれを打つか──と、とある台に狙いを定めて着座する。天井まで残り500ゲームほど。当たり前のように5スロなので、とりあえず4000円くらいブチ込めば何か引ける。仕事終わりのストレス発散にはピッタリだった。
いざ台に向かい合い、ケツのポケットから財布を引き抜いたあと、ふと気づいてフンと鼻を鳴らした。
その店は千円札しか使えない旧式のコインサンドが設置してあって、そして俺の財布には万券しかなかったのである。