真田純勇士のカットインのアレ。

スロ論

萌えスロ。という単語がどっかいって久しい。一時はNETを中心にやたら推してた気がするけども、今はもう変に市民権を得てしまったのか「萌え」という単語でもってウリにするパチスロというのはトンと見なくなってしまった。

俺と萌えスロの邂逅は『爆釣(メーシー,2001年)』が最初だった。というか俺のペンネームである「あしの」はこの爆釣という機種の主人公からとってるんだけども、まあ打ったことがある人には分かるかもしれんが件の機種には「びわこちゃん」という幼女と「はるな先生」というお色気熟女系(?)キャラが、当時はまだ珍しかった液晶を使った演出に登場しており、たぶん「萌え」とかそういうのをはっきりと狙った機種としては初出だったんじゃないかなぁとか勝手に思っている。

かくいう俺は当時いわゆる「萌え」を激しく嫌っていた頃で、これは自己分析するに男子小学生の心理状態と同じであった。要するに、ホントは好きなくせに恥ずかしいから必要以上に嫌う的な。問答無用で女子は敵だと喧伝するようなアレだ。故に当時は「この爆釣という機種はめちゃ面白いネェ! でもこのびわこちゃんとはるな先生がいなきゃ最高なんだがよォ」とか深夜のファミレスで友達相手にタバコをスパスパ吸いながら言ってたのを覚えておるわけでして。俺と萌えスロとの出会いは、そんな感じだった。まあ爆釣自体は萌えスロじゃないんだけどもね。

でだ。その後、萌えスロはあっという間に業界を席巻した。

それこそNETのRIOちゃんが台頭したりジュディスが台頭したりセーラが台頭したり。あるいは他のメーカーもゴリゴリに「おい、おっぱい揺らしたら食いつきいいぜ!」みたいな感じで萌えキャラを放り込んできておって、萌えスロ市場はまさに古代期におけるカンブリア大爆発の如き爛熟を一足飛びで迎えておったわけだ。この辺は2007年にSANKYOが生み出した鬼子、『バトルリーガー』を見ればよくわかる。主人公は玉だ。よく分からんかもしれんが玉なのである。玉としか言いようがないんでもはや玉っていうけど、とりあえず男の子っぽい玉とか女の子っぽい玉とかが活躍する玉スロだった。これはこれでスカッとしてる感じがするけど、問題は時折登場するおっぱいがデカい女の子キャラである。気になる方は各自ググって欲しいが、これがなかなかとってつけた感じというか。

もうね、たぶんメーカーの偉い人も「おい玉オンリーはさすがに弱いから女の子だそうぜ」みたいな感じで現場をつついた感じがめっちゃするわけで。現場ではきっと喧々諤々の議論があったんだろうなぁと。そんな感じで思ったのを覚えておる。現場ってどこだよと思うんだけども。何も知らなかった当時は険しい顔で「これは問題だな」とかひとりで危機感を覚えていたもんだ。

このままパチスロは、萌えに支配されていくのかのう。みたいなね。

萌えスロは素晴らしいものだ!

さて2007年。KPEの『マジハロ2』が登場した。

当時俺は足立区の中心で愛を叫びながらカルチャースクールの店長をしつつ、空いた時間でパチスロを打つという生活をしていた。何打ってたかあんまり覚えてないけども、マジハロ2はやたらハマってたように思う。初代が好きだったというのもあるけども、単純に機種として面白かった。

萌えスロを嫌う俺がマジハロを楽しむというのもダブスタが過ぎるんだけども、当時は飽くまで「俺は上乗せハープ音が聞きてぇんだ」と自分を騙していたように思う。とはいえ今思い出してみるとローズのおっぱいばっか見ていた。もはやこれは男のサガというか本能なんで仕方がない。乳があるならそれを見る。これは嗜みに近い。礼儀作法の一種だ。いや俺は萌えスロは好かんのだと理性でブレーキをかけていたのだけども、思い返すになんだかんだじっくり見ていたものだった。

しかし、スタンスとしては「萌え嫌い」を貫いていた俺はそれを認めず。やっぱりファミレスでタバコをスパスパ吸いつつ「いやーマジハロはローズがいなきゃ最高なんだけどなぁ」とか言っておった。小学生男子である。繰り返すが俺はローズをガン見しておったし、なんならずっとローズモードで遊んでいた。にもかかわらずこの言い草。ドッジボールぶつけてやりたいけど、とにかくこの時期まではまだギリで反萌えスロを貫いていたように思う。

さて2011年。空からアンゴルモアの大王が振ってきた。またマジハロで申し訳ねぇけども『マジカルハロウィン3』だ。

その時分までギリギリ萌えスロ嫌いを公言して憚らなかった俺はこの機種でいよいよ陥落する事になる。ローズ? いや、違う。ルビーだ。ファンタジアンデリバリーサービスです! といいながらお菓子運んでくるあの巨乳だ。

打ったことある人なら分かると思うけど、3の頃のマジハロは乳揺れがエグかった。というか開発のリソース振り分けがおそらくイカれてて、マジで捨てコマが無いレベルですきあらば何かしら揺らしてくるみたいな感じ。アニメーターの職人芸と信念が輝きまくってちょっと頭がおかしいレベルだった。隙間なく揺らす。なんせ端役のルビーがメインで出てくる演出は単なる小役予告&連続演出のトリガーに過ぎぬくせに、レバオン直後と第三停止後で二回揺れてた気がする。もしかしたら三回揺れてたかもしれない。俺はこれに男の仕事を見たし、それを観てるうちになんかのタイミングで手のひらをくるりと返したように「いいね!」ってなった。

奇しくも当時は私生活がゴタついてる時期で、なんかストレスもあったのかもしれない。そういう精神状態とルビーの乳揺れがシンクロした結果、「萌えスロいいじゃん!」といきなり肯定派にひっくり返った感じだ。もしかしたら台から変な電波でも出てたのかもしれんが、とりあえずこの辺の精神状態の揺れっぷりは分析したらまた違う研究結果がでそうな気がする。

ともあれ以降、俺は「萌えスロ」に対する偏見やこっ恥ずかしさをゼロクリアし、「うひょーいいね!」みたいな感じの無垢な笑顔で楽しみ始めることになったのだった。ちょうどブログも始めた頃だし、恥ずかしさも何もかんも棄てて写真撮りまくった。あれは結構慣れが必要だけども、大丈夫。3枚で慣れる。そして慣れたら、ブランニューワールドが広がっておるのだ。

真田純勇士すぺしゃるでたまげる。

さて。マジハロ3で遅咲きの竜胆(りんどう)となった俺は『麻雀物語2』やら『キュインパチスロ南国育ち』やらを菩薩のような笑顔で打ち込んでいた。そしてある時、恐るべき台と出会う。それが『真田純勇士すぺしゃる(ニューギン,2012)』だった。

これはマジでビックリした。いろいろツッコミどころは多い台なのだけども、何が凄かったって極稀に発生するカットイン予告。佐助と才蔵がおっぱいとおっぱいをぶつけてドゥーンてやるやつだ。これはケツが浮きそうになった。最初見た時。

「え! ドゥーンてしたよ今!」みたいな感じで、思わずホールを見渡したもんだ。なんでこんなすごい台があるのにみんな騒がないんだ!? みたいな感じ。

独学でその道を進む俺にとってそれが「萌えスロ」の正しい嗜み方なのかどうかは分からんが、少なくとも「乳揺れスロ」としてはエクストリームまで行ってる様を見せつけられた感じがした。あれは少なくとも5年は進んでた。いや、6年進んでるかもしれない。だって俺、あらゆるエンターテイメント作品の中で巨乳と巨乳がパイオツをドゥーンってぶつけるシーンとか観たことがないもの。ある? みたこと。あります? 俺はない。なのでこう思った。発明だ、と。なんせ映画でもゲームでも観たことないもの。当時ようやく見始めたアニメでも観たことないし、エロ動画でも観たことない。だってぶつけたら痛いだろうし。普通はぶつけようと思わない。それを敢えてぶつける。天才の仕事だと思った。

これは「乳のアピールの表現」としてはまことに新しいものだし、その新しいものがパチスロの激アツ演出にて生み出されているというのを目の当たりにして、俺にはもう震える手でタバコを吸うしか残されていなかった。歴史が動くその瞬間を、北綾瀬駅の近所で目撃する事になるとは。だってこれすごいよ。観たことないもの。10年くらい前に49番目の体位「ヨシムラ」が発見されたということで話題になってたけども、それに近い感動があった。

天才はニューギンにいたのである。

俺はその技(?)を「おっぱい真田すぺしゃる」と命名し、その素晴らしさを知り合いのスロッターに熱く語った。乳揺れをアピールするのにはどうすればいいか。飛べばいい? 振ればいい? ナンナンナン(人差し指を降りながら)。ぶつけるんだよ。と。

……冒頭に戻るけども、「萌えスロ」という単語があまり聞かれなくなって久しい。良くも悪くも一般的に成りすぎたので、セールスポイントにならないからだろう。

これが良い事かどうかは知らん。が、変革の歴史はそのまま犠牲の歴史だ。我々が立つ薄氷の上には、ただ「萌え」を押し出して討ち死にしていった機種が山程ある。アレとか。アレとか。そしてアレとか。具体的な名前を出すとちょっとアレなんでアレだけども、とにかくそうして散っていった英霊たちの屍の上に、今の業界はある。

みなさんも、昔好きだった萌えスロの事を。たまには思い出してあげてください。支えないと駄目なのさ萌えスロは。だって「おっぱい真田すぺしゃる」みたいな恐るべき発明が成される土壌というのが、パチスロにはあるのだもの。規制やシステムや操作の幅や。その他あらゆる制約の上でこそ生み出される新しい表現方法というのが、パチスロにはまだ残されていると思う。野放図からは秀作しかでない。抑圧は革命の父であり、そして母で、その間にこそ、真に革新的な表現は生まれるのだから。

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