【心の名機】トゥエンティセブン(YAMASA)

心の名機

(※2014年に書いた記事の移植版ッス)

武田信玄曰く。

為せば成る
為さねば成らぬ
成る業を
成らぬと捨つる
人の儚さ

意味は「やろうと思えば出来るんだけど、出来ねぇと思って諦める。人ってなんだか切ないね」みたいな感じ。ちょっとスイーツ。
確かに、やろうと思ったら出来る事でも、なんか最初っから諦めて投げ捨てたり、無駄だと思ってそもそも手を出さなかったりね。
計画だけは壮大だけど、今一歩実行に踏み出せなくて打ち捨てられた「大成の可能性」は、この世に5万どころか5億とかいうレベルで溢れまくってるし、珍しくも何ともない。
もしも人類のヤル気の平均値がもうちょっとだけ高かったら、きっと世の中はもっと、素敵なサムシングでいっぱいだった事だろう。

さて、本日はそんな厭世観溢れる武田信玄もビックリのはっちゃけ台、YAMASAの「トゥエンティセブン」について。
これは成したね。
明らかに何か成そうとして、そして見事にやり遂げた台だ。
んで作った方も「やらなきゃよかったな!」って清々しく笑ってる事だろう。

●素晴らしい発想。

この台がどんな台だったかというと、業界初の「27ライン機」である。
27ライン……。
3つの絵柄がある3つのリールでどうやれば27ラインを再現できるかというと、もはやこれ、3を3みっつ掛けるしかない。
つまり3の3乗。それで27だ。
具体的にい言うと、左リール上段に7、中リール下段に7、右リール中段に7とか、そういうのも成立ラインとしてカウントされる。
V字揃い、小山揃い、Lやら逆Lやら何やらカンやら……全部まとめて成立ラインにカウントだ。
要するに、「各リールどこでもいいから同じ絵柄が出てりゃ揃い扱い」なんだよ。

もはや何も「ライン」じゃない件。

……とかいう素朴なツッコミはこの際置いとこう。
いいんだよ。これはこれで。
とりあえずリール二つ停めた時点で両方のどっかに7が出てれば「テンパイ」。
ラインによってはテンパるだけでそれなりに熱いんだが、笑えるのは2リール目、3リール目ともかなり強引に滑ってテンパイを拒否する所。
毎ゲーム無駄に滑って回避。回避ッ。回避だッ!
この「拒否られてる感」がマゾにはたまらない。
もちろん目押し不要。
ただひたすらにスキな順番にリールを停め、斬新なラインに揃う小役を眺め続けるのである。

当時はとにかくスロ台のアイデアがほぼ「出尽くした時代」だった。
末期とは言え4号機の只中にあったわけだし、なんせあの北斗で「Cタイプ」の可能性が大いに見直されてた時期でもある。
そんな中で「北斗っぽい出玉感をなるべく安い感じでサラっと作り、かつインパクトのあるネタを仕込んでスロ界に新風を巻き起こしたい」という高いのか低いのか良くわからない志が、「業界初の27リール機」という形を得た時、この珍台は世にその幽かな産声を上げたのである。

Cタイプ。

これは5号機の今の時代に説明すると結構面倒なんだけど、つまりは「ビッグボーナスが無い」台の事だ。
BIGが無くてどうやって増やすかっつうと、集中(シングルボーナスの高確率状態)もしくはREGである。
単純にREGのみ搭載の台は「C」。
BIGで400枚でて集中搭載でATもついてるテクノスペック(造語)は「A400+C+AT」みたいな感じ。
純粋なCタイプで有名なのは当然「北斗」だろう。あと何か色々あったけど脳がメロンパンみたいになってるんでパッと思い出せないが、アレだ。「ワンチャンス」。アリストクラートの。あれもそうだよね? なんかサッパリどんな台だったか思い出せんが、「旋風の用心棒」みたいな感じでATきて延々とREG揃ってた気がする。メイン小役が「ホネっ子」で1枚役だったような……。

な、ワンチャンス。
Cだよね。
……アレ?
やばい、思い出せない。

あれー、ワンチャンス。
どんなだったっけ。
ヤバイなぁ。マジで記憶が霞んでるわ。
結構スキだったんだけども……。
レバオンで「ワンッ」つってなかったか?
んで何か犬なんだよな。
あれー? ワンタッチャブルと混同してる?
んで今オレの脳内に「ブルドッグ」のパネルがすげー勢いで浮かんでて打ち消すのが大変なんだが、ワンチャンスの犬ってダルメシアンだっけ?
あららら。ヤバイぞ。犬台の紛らわしさに初めて気付いた。
てかそもそも、あったよね? ワンチャンス。
存在したよねアレ。
無かったっけ? まぼろしかあれ?
なんかもう思い出せないし調べる体力もアレなんでオッケー。
過去そういう台がありました。(よね?)

まあいいや。

とにかく、「トゥエンティセブン」も分類上は「Cタイプ」だった。
厳密に言うと「C+ST」みたいな感じになるんだろうけど、もうそこまで区切ると北斗ですら「C+AT+ST」みたいな表記にする必要があるんでいい。
面倒くさいからもういい。
北斗はC。トゥエンティセブンもC。
これにてピースフル。

でだ。

Cタイプって何でこんな強調するかっつうと、それは台の連チャン性能に強烈に関わってくるからだ。
そもそもBIG搭載しないって事はそういう意味でね。
出玉がスゲー少ない代わりにゴリゴリ連チャンします! みたいなね。
そういうノリなのね。
で、「トゥエンティセブン」も同じく、一回ツボるとひたすら(わけの分からんラインに)7が揃いまくり、そしてメダルをモリモリと吐き出すのである。

そしてコイツが奮ってたのはその有効ラインの無駄な多彩さをフルに活かした「揃いラインによって連チャン期待度が変わる」システムだった。

例えば斜め揃いとか下段とか、なんでもいいから一直線に7が揃うだけでもそれなりに熱い。
逆にズレ目で当たってるとほぼ二連とかで終わり。(仕様上、単発はほぼ無い)
ヤバイのが平均27連の「ジャックポットモード」で、これの時は中段にドスンと7が揃う。
しかも毎回揃うんじゃなく、7揃いゲーム時に20パくらいで制御がヒットした時だけ揃う。
なので、2連目でいきなり中段揃いがきて「やべー単純計算で25回も連チャンする!」とかそういう安心の大連チャンをブチかませたり、またいつ終わるか戦々恐々としてる中でいよいよ連しまくり、20連目くらいで中段が降臨し、「ジャックポットだったんかーい!」と台に突っ込みそうになったあと即座に終わったりね。
まあそんなノリで楽しめたよ。

俺ジャックポット引いたことないけどね。
妄想上だけどね。

●トワイライトゾーン

で、俺朝一からコイツに特攻してクソ勝ちした事ある。
なんか6000枚くらい出た。
てか実戦3回しかしたことねぇんだが、いずれも炸裂してる。
で、3回とも「シマで打ってるの俺だけだった」。

そもそもオサビなホールだったんだけど、大体からしてこの台、何か知らんが人気なかった。

やっぱね。
バラケ目で大当たりッ!とか言われても有り難みが薄いんだよ。マジで。この台が北斗の座に滑り込めなかった最大の理由ってそれだと思う。あと目押し不要だしさ。なんか台が勝手にバラケ目で揃わしてる感がありありと感じられて、揃う度にちょっとムカつくんだよ。
まあ初回揃った時は基本的にハマリ中だからどんな目でも嬉しいんだけど、二連目以降は転落率との戦いになるわけで、その確率を示唆する揃いの形に一喜一憂するしか楽しみが無いんだよ。
一方北斗はラオウとキャッキャウフフできるわけで、ボーナス消化自体が楽しいしさ。
ジャック絵柄ちゃんとまっすぐ揃うしねあれ。
やっぱバラケで当たりッ!っつうのがどうもね。

ある日の事。
俺はF君という友達と一緒に、例によってオサビなスロ屋にいた。
その店はホントにダメダメな店でさ。
中段チェリー確定の「北斗の日」ってのがあって、金曜だったかなんかは朝一で中段チェリー出てるんだけど、ガセるんだよこれが。
つまりスタッフが手動でリールだけズラして中段チェリー出してるというね。なんかもうね。そこまでやるかみたいなさ。悲しくなるよ。スロッターとして。この店。
ホント暴虐なの。
あと「ストック飛ばしま宣言!」っつってデカい垂れ幕かかっててね。
優良店アピールが凄かったんだけど、飛ばしてたからね。吉宗。キーン鳴ってREGとか余裕ですから。
魔窟だよ魔窟。
あとスタッフが完全にドキュンでさ。
マレットヘアの襟首の所だけ金髪にしてるヤツいたからね。
天山広吉かと思ったよ。
もうそこは勝つとか負けるとかそういうのを超越した、異世界への冒険旅行みたいなノリで行くべきアドベンチャーエリアだったわけでね。
要するに、行くほうが悪いんだよこういう店は。
いっちゃダメ。
メッ!
でもね、やっぱ北斗の日とか言われると、思わず覗きたくなる酔狂なスロッターも一定数いるんだこれが。
俺もその日、F君に誘われて、いやいやながらも朝一で並んだよ。

……その日、俺はトゥエンティセブンに直行した。

理由は簡単で、その店にしかこの台が無かったからだ。
どうせなら打ったことない台を打ちたかったんです。
F君はガセチェリーイベントに参戦するために北斗に向かっててね。
まあやっぱどんなクソ店でも北斗はある程度客が座るわけでさ。
伽藍堂みたいな店内で、唯一そこだけが盛況だったよ。
大音量のユーロビート。
遠くから聞こえる「アタアタホワタ」みたいな声。
そんな中で「トゥエンティセブン」だよ。
右みても左みても人がいない。
初打ち、投資三本くらいですぐボーナス。
もちろんバラケ目でさ。
なんだこりゃ、と思ったね。
違和感が半端ない。

アタアタホワタ。
ドゥッビドゥッビドゥビドゥッドゥッドゥッ!
アイドンニージョ! ラーブ!
ウヌの力はその程度か……!

なんか知らんが俺ちょっとゾッとしてさ。
マジで寂しいんだよ。
誰も居ないしわけわかんないラインに7揃うし。
んで店員マレットヘアだしさ。
しかもこれがスゲー爆裂してね。
もういいよっつってんのにゴリゴリ当ってさ。
繰り返すが俺しかいねぇんだよ。
周り見ても。
マジで異世界だよ。
バラケ目だしユーロビートだしマレットだし……。

あ、トワイライトゾーンだ。
と思ったね。

「……なんかスゲーでてるね」
「あ、Fくん。……なんかキモいよこの台」
「俺ソレ打ったことないや……」
「そっちどう?」
「もうすぐ天井」
「そうか」
「うん」

その後、俺は淡々と6000枚くらい出し、そしてF君は普通にクソ負けで終わった。
帰りに二人で回転寿司食いに行ったけど、びっくりするくらいスロの話しはしなかった。
俺はエンガワに醤油たらしつつ、我々の住んでる世界は薄い氷の上にあって、その下には未知の世界が広がってんだなってのを、ちょっと理解した。

スロ打ちながらなんか怖い気分になったのって、これが最初で最後だよ。

そう。
YAMASAがぶっ込んだコイツは俺にとって、ちょっとした「ホラー台」だった。
(半分以上店のせいなんだけども)

為せば成る。為さねば成らぬ……と言ったのは武田信玄だけど、俺は敢えて信玄公に言いたい。
敢えて成さなくていい事もあると思います!

と。

コメント

  1. 師匠2 より:

    えっCタイプ?クレイジーバブルス?タッチダウン?
    誰も反応しないよな
    結局Cタイプで成功したのは北斗だけだもんなあ